パンツさぼると安っぽくなるよ
この世界には数多くのボトムスが存在しトレンドも合間って少しずつシルエットも変化していく。少しの違いが現代的かどうかを別つ繊細なラインも多く存在している。
私はボトムスデザインがとても好きだ。同業者からは珍しがられる。
できる事が少ないからつまらないという方も多いようだが私にとってとても大切なデザインだと思っている。
デザイン、パターン、素材、縫製方法等。
他のアイテムを作る時もそうだが全て納得できないとリリースしたくない。
ボトムスの形状をまとめた動画を過去に出した事があるので見ていただけると嬉しい。
そんなボトムス大好きな私は昔からサルエルパンツ愛好家だ。
メゾンのものも民族衣装のようなものも数多く着用してきた。
ふと、なぜここまで好きなのか考えてみた。
そこにはやはりコンプレックスが隠れている事実に気がついた。
憧れと鏡の向こう
6月になるとパリを中心にメンズファッションが騒がしくなる。数々のメゾン、その関係者、新進気鋭のブランドの合同展示会、ファッション関係者のインスタグラムが華々しくなる。
この時期くらいになると8月に日本で行われるファッションウィークに絡めたイベントのお誘いがきたりもするものだ。
ファッションが大好きで海外のブランドや関係者、来場者などのスナップを見ると毎回思う
「ずるいなー」
センスもさることながらそれを凌駕する圧倒的なプロポーションの違いに打ちのめされる。
どこまでも続くような足、起伏のある骨格。
先天的ギフト。
ファッションはどんな人でも楽しめる。人と比べるもんじゃない。絶対的なものではないし自己表現なんだよ。
根本的にはそうだがコンプレックスが無視できないのも現実。
我々東洋人がそれを気にせずに楽しめるものはなにか。
そこでサルエルパンツである。
股上が深く腰の位置が限りなく曖昧になり、トップスを長めにしても大きくしてもバランスがとれる。個性もありながら股上に余裕のある余白を利用し大型ポケットも仕込みやすい。
和服を思わせる生地の揺らぎも相待ってこれは我々の人種に最適ではないか?
あとはこれまで無数のサルエルを履いてきた私が抱えていたストレスを解決したい。
既存の問題点を洗い出す。
- 生地量が多いので重い
- 足が上げづらい
- 自転車に乗れない
- 股部分の生地量が多く暑くなる
2は設計上腿が繋がったデザインになりやすいので開脚した状態をもとにパターン設計して解決。
3がなかなか難しい。サドルにひっかかるため深くなっているところを無くさねばならないので履き位置をすぐ調節できるようフリーウエストにし、2との合わせ技で解決。
4これは1との合わせ技で透湿性に優れた素材を用いて解決。
さらにきちんとした服を着ていると伝わりやすい上質な素材と高級なパーツを用いて、股上部分の余白を利用した3層ポケットと大型カーゴポケットを搭載したHD Drop crotch cargo trousersを最初に制作しました。
その後により股上が深く、ブランド設立前から何度も作り直したサンプルの最終系に近い形状でスイスのshchoeller社と取引しその素材を用いたSchoeller Dryskin Dropcrotch trousers を制作しています。
他のボトムスにもこの思想が反映されている物も多いですが伝わりやすいものを選びました。
好きなものを使っているうちに気がつく小さなストレス。それは服だけでなく生活の中にも存在するものですが、こんなもんだよなと無視せずにどうやったら解決可能なのかと思考を巡らせています。
着たいと思えるデザインでありながら小さなストレスの無い服を作り、年齢を重ねてもファッションを辞めなくていいと思えるようにしたいもんですね。