1つのパンツに3つのシルエット

1つのパンツに3つのシルエット

謹賀新年

皆様あけましておめでとう御座います。 毎年毎年、年末の何かが起こりそうなそわそわした感覚のまま年を越し、得も言われぬような虚無感に襲われる。

サンタクロースが居ないと気付いたのは、キャラクターの背中のファスナーを見つけたのはいつだったか

ベランダのドアをあけて眩しい太陽と冷め切った青空を見上げいつも通りだと確認し、平常の1日がヌルっと始まる。

余分についた脇腹の肉と、時が何かを起こすわけではないのだという小さな絶望を心に溜めながら目を逸らし日々がカタカタと音を立てて少しづつ動きだしていこうとしている。 この小さな絶望感が人を成長させてゆく、そんな気がしている一年のはじまり。

再販

昨年末にHLVTCから再販したパンツがある。Spiral Cut Trousers 2.0である。

1作目から2年半以上空いてしまったのにも色々と訳がある。 ということは再販したのにも訳がある。

私は以前のブログでも述べたがパンツを作るのがとても好きだ。 ジャケットもトップスも好きなのだがどうしてもパンツを多く思いついてしまう。

自分がそれを起点にコーディネートを組むからなのも理由の一つかもしれない。

バックボーン

その中でもブーツカットもしくはフレアパンツ。

これは私が今まで殆どと言っていいくらい履いてこなかった形である。

ヒッピーよりパンク、エレガントよりグランジ、カジュアルよりモード。

それらが通ってきた道筋なのでフレアの合わせ方が今ひとつ自分流に落とし込めない気持ちがあった。

そういう思いもあり前作Spiral Cut Trousersで裾にギミックを施し様々なシルエットに可変できるようにしたのだ。

これを発案した瞬間に確かな手ごたえがあった。これならフレアが苦手な人も履ける「フレアにもなる」パンツである。

カルチャーやシルエットの好みを大股で言ったり来たりする大型新人誕生前夜であった。

玄人受け

通常パンツデザインではサイドに縫い目を入れて前後を繋いで筒状のものを作っていく。

なんだかこれを壊してみたくなった。

螺旋状の布が脚に巻き付いているようなカットラインで前後という概念をとっぱらい、黄金比の回転のように美しくカーブを描いて腰から靴まで到達するような構造にしたい。

そしてその繋ぎ目はあくまでクリーンに強調しすぎない縫い目にし、近づいて見ると凄味が伝わるようにした。

展示会の際に同じ業界の方が見に来てくれた際、こう聞かれた。「これはこのままで量産するんですか?」

内側の人ほど伝わるこの難易度。

難しい服がいい服というわけではないがたまにこういう、唸り声をあげながらヨダレを垂らし他ブランドを威嚇する猛獣のような個体を作りたくなる。

2作目爆誕

前作はめでたく完売となり手ごたえもあったため、暫くフレアは作らないかもなと考えていた。

しかしシェイプを研究していた際に新しく好みのボディバランスがあった。

丈は長め、腿は少しシェイプしつつお尻が綺麗に見えるようにしたっぷりした裾幅をゴツいブーツやスニーカーで押さえ込む。 裾を少し溜めてもモード感、美しさを感じるシルエットへ昇華せねばならない。

この個体の3つの可変シルエットであるテーパード、ストレート、フレアをそれぞれより強調しカジュアルな着崩しができつつラグジュアリーな要素を持つため生地に光沢を持たせよう。

トップスが短いものはもちろん、ゆったりしていても長くてもコーディネートできる。

フレアのシルエットを支えつつテーパードで厚くなりすぎないよう前作より少し薄手の生地「ベンタイルギャバジン」を採用した。

ここでまた確かな手ごたえがあり今作Spiral Cut Trousers 2.0は誕生した。

YouTubeで前作と比較しているのでぜひ見て欲しいです。

HLVTC海を渡る

2024年最初のイベントとして台湾のセレクトショップ「HYST」さんでHLVTCのPOPUPを行うことになりました。

いままでリリースしてきた自信作たちを携えていざ台湾と乗り込んでいきます。

新しく、パンチのある製品が必要だというものである。

ダウンジャケットは気候的に難しいと考えたため違うものを提案しよう。

新作持っていくと約束をしていた、これがまさにそれだ。

私がチェックする中で、台湾で最もテックウェア、そしてテックファッションに強くほかには無い提案をしている店舗である。

擦られ倒して市場ではその二つのフレーズが過去のもののようになりがちであるが、機能と形が優れたものという観点で言えば私は廃れるわけがないと考えている。

ステレオタイプのそれぞれのコーディネートとコスプレっぽくなってしまう表現方法がネックなのではないか。

もっと組み合わせは自由だし楽しむべきだ。それとは裏腹なようだがHLVTCを着ていれば合いますよという安定感もブランドとしては必要だろう。

安定感と自由度を同時に提案していきたい。

海を渡り勝負するためにもブランド史上最高難易度の猛獣ボトムは仕上がった。

まずは見て体感し、日本にヤバいブランドがあると示してきたい。

自分が欲しいもの、お客様に提案したいものを中心に制作しているがたまにはこういう威嚇するものもやっていきたいと考えています。

Spiral Cut Trousers2.0初出しの台湾イベントは2/17〜2/25まで。

HYSTさんの台北と台中の店舗で1週間ずつ開催します。

私は週末限定で店頭に立っています。

いつも来てくださる皆様よろしければ台湾旅行がてらいかがでしょうか。 詳しくはまた次回、説明させてください。

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